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男子プロテニスツアーの構造

日本において、テニス人気が再び高まって来ています。錦織圭選手の継続的な活躍と、大坂なおみ選手のグランドスラム優勝という前人未到の快挙がその大きな要因と言えるでしょう。
しかし、人気が高まっているとはいえ、未だにテニスを見るのはグランドスラム(錦織選手や大坂選手の試合)だけという方が多数を占めています。テニスを実際にプレーする愛好家のみならず、テニスを指導するコーチまでもがそうである、というのが日本の現状です。
確かにグランドスラムは華々しく、世界で最も注目を集める大会のひとつではありますが、それだけ見るというのは実にもったいないと僕は思うのです。グランドスラムに至るまでのツアー大会、下部大会において、上位選手の圧倒的活躍や、上位選手の早期敗退、新たなスター候補の誕生、ベテランの再起、若手の苦悩など、様々なドラマがあります。その集大成がグランドスラムなのです。そこに至るまでの過程を追っていくことで、集大成としてのグランドスラム、ひいてはテニスという競技そのものをより深く楽しめるようになるのではないでしょうか。
ところで、グランドスラム大会以外があまり見られていない、知られていない理由の大きなものとして、『時差』があげられます。毎週世界のどこか、その多くは日本から遠く離れた場所で大会が行われています。これらをすべて追っかけていくのは夜全く寝ないということになり現実的に不可能です。時差の問題は世界中(特にヨーロッパやアメリカ)で試合が行われている限りは解決できませんので、とりあえず脇へ置いておくことにしましょう。
そうであったとしても、グランドスラム以外のテニスにもっと興味をもってもらえるようになるには?と考えたところ、プロテニスツアーの構造を知っていただくことが解決策のひとつになるのでは、と思いました。知らない⇒興味ない⇒見ない という負の連鎖を断ち切れるのではないかと。
前置きが長くなりましたが、今回は男子プロテニスツアーの構造についてご紹介いたします。※女子プロテニスツアーについては、またの機会に♥
まずは下の図をご覧ください。
このように、男子のプロテニスツアーで実施されているトーナメントは大きく分けて6つ階層から成っています。プロの選手達は各トーナメントに出場し、勝ち上がることで『ポイント』を得ていってランキングを上げ、より上位階層のトーナメントを目指していきます。大会で得たポイントは1年で失効してしまうので、ランキングを上げていくためには、昨年よりもより多く勝ち上がる、より上位のトーナメントに出場して勝ち上がっていくことが必要です。
①~④の階層にあるトーナメントを『ツアー大会』と呼び、賞金や待遇、得られるポイントもケタ違いに上がります。しかし、予選に出ても本戦に出場できなければそれらの恩恵を受けることはできません。また、ランキングが低いと予選にさえ出られないという事態となります。
そういうわけでプロのテニス選手達は①~④のトーナメントの本戦に出場して勝ち上がる為に、必要なポイントを獲得もしくは守ることを毎週のように行い、ランキングを維持または向上させていかなくてはなりません。
では、それぞれの階層について簡単に説明していくこととしましょう。
【 ①GS=グランドスラム 】
優勝賞金:4億円以上
優勝ポイント:2,000
必要なランキング:100位以内
必要なポイント:約600(100位の場合)
御存じ世界のスポーツの中で最もメジャーな大会のひとつです。1月中旬から行われる全豪オープン、5月下旬から6月初めにかけて行われる全仏オープン、6月下旬から7月初めに行われるウィンブルドン、8月下旬から9月初めに行われる全米オープンの4つで構成されています。賞金総額は年々上がっていて、本戦に上がって1回戦で負けたとしても500万円以上の賞金を手にすることができます。
【 ②ATPマスターズ 1000 】
優勝賞金:1億円以上
優勝ポイント:1,000
必要なランキング:80位~40位以内
必要なポイント:約1100(40位の場合)
グランドスラムに次ぐ格の大会で年間9大会あります。ドローの本数が少ないので、グランドスラムよりも本戦ストレートインするのが難しいです。また、ATPエントリーランキングで上位シードに入っている選手には出場義務があります。しかし出場免除の規定も存在します。
【 ③ATP500 】
優勝賞金:約5000万円
優勝ポイント:500
必要なランキング:110位~50位以内
必要なポイント:約950(50位の場合)
ATPマスターズ1000に次ぐ格の大会で年間13大会が設定されています。前年度のランキング上位30位以内の選手については13大会中4大会の出場義務があり、そのうち1大会は全米オープン後に出場しなくてはならない、とされています。日本で行われる楽天ジャパンオープンがこのカテゴリーに属します。日本で行われるツアー大会は1つだけなのでなんとも寂しいです。もっと増えないかな。
【 ④ATP250 】
優勝賞金:約1000万円
優勝ポイント:250
必要なランキング:130位~60位以内
必要なポイント:約950(50位の場合)
ATPツアー大会の最下層にあたります。しかし本戦に上がれると、ホテルの宿泊費がすべて大会もちになったり、ホテルから会場まで運転手つきの車が送り迎えしてくれたりするなど、とっても高待遇です。トレーニング施設なども充実していてコンディションを整えやすくなります。
【 ⑤ATPチャレンジャーツアー 】
優勝賞金:約100万円~250万円
優勝ポイント:80~125
必要なランキング:320位~160位
必要なポイント:約340(160位の場合)
このカテゴリーになると、会場が一気にローカル感満載になります。でも選手との距離が近いということでファンにとっては嬉しいです。ここで戦っていた選手がツアー大会で活躍すると凄く嬉しくなります。
【⑥ ITF ワールドツアー 】
優勝賞金:約20万円~50万円
優勝ポイント:5
2019年からシステムを改定して、ITFフューチャーズから、ITFワールドツアーとなり、獲得できるATPポイントが激減。かわりに、ITFランキングポイントを獲得し、ATPチャレンジャーツアーへの切符を獲得していきます。
どのような目的でこの変革が行われたかというと、『プロであるならば自活できるべき』という考えに基づいて、『ずっと下部ツアーでくすぶっている選手を排除する』。とっても悪い言い方ですがこういうことです。プロテニス界はますます厳しい競争社会になっていくのです。
【番外編 ATP ワールドツアーファイナルズ 】
優勝賞金:約3億円(全勝優勝の場合)
優勝ポイント:1500(全勝優勝の場合)
必要なランキング:ATP Finals Race To London 8位以内
必要なポイント:?
まさに選ばれた者のみが出場できる最高峰の大会です。出場の条件は厳しく、年初から獲得したポイントで8位以内に入らないといけません。そのかわり出るだけで2000万円以上の賞金がもらえます。
【まとめ】
テニス選手にとって、グランドスラムの本戦に出られるかどうか、すなわちTOP100を切れるかどうかというのは死活問題なのです。そしてさらに稼いでいくためには、ほとんどのATPマスターズ1000 の本戦に入れるTOP50が大きな壁となってきます。
その目標を達成するために死に物狂いで戦っている姿を追いかけていくというのは素晴らしいことだし、すごく面白いことなのではないかと思うのです。
そして、当たり前ですがプロ選手は、下部大会に出ている選手であったとしても、我々一般の人たちとは全く次元の違うテニスをするので、その技術や身体能力、戦略をみることは単純に凄く面白いし、自分のテニスに活かせることも多々あると思うのです。
          
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