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ナイロンガット・ポリエステルガットの違い~物性で比較してみた~

【はじめに】
ナイロンガットとポリエステルガットの違いをなんとなく知っているという方は多いかもしれません。それは実際に使ってみた経験であったり、テニスショップの店員から聞いた話であったり、ネットで得た情報であったりするでしょう。
ただ、そのほとんどは感覚的な話に終始していると思います。
でも、それが悪いと言っているわけではありません。実際に使ってみてどう感じるかは感覚以外の何物でもないからです。
ただ、僕は少し違う視点でナイロンとポリエステルの違いを知りたいのです。ナイロンやポリエステルにどのような「物性」があり、それが実際に使ってみた感想とどう関係しているのか、コート上でボールを打った時に起こる現象とどう関係しているのかを。
ここで、「物性」という聞きなれない言葉を使いましたが、「物性」とは物質の持つ物理的性質のことで、機械的性質、熱的性質、電気的性質、磁気的性質、光学的性質があります。
「物性」をごく簡単に説明するなら、物質が有している硬さや重さ、熱による溶けやすさ、電気の通りやすさ、磁石へのくっつきやすさ、光がどれだけ反射するかなどであると言ってもそう遠くはないと思います。
僕は物理に関してド素人なので、細かい所や難しい所は飛ばし、テニスに関係ありそうな項目をピックアップし、理解しづらい値や表現もできるだけ使わず、簡単に比較してみたいと思います。
【比較の前提】
この比較を行うにあたり、多くのHPで情報を調べましたが、そのHPによってナイロンやポリに関する物性値が微妙に違うことがわかりました。ただそれは当たり前で、その製品や試験方法、環境が違えば値は変わります。
また、ナイロンにも多くの種類があり、ポリエステルにも多くの種類があります。多くのガットにどのようなナイロンが使われていて、どのようなポリエステルが使われているのかは、僕にはわからないです。
そして、メーカーもガットの素材を他社の人物に漏らすことはほとんどないと考えられます。
ですので、ここでは一般的なナイロンとポリエステルで比較したいと思います。
しかも、実際に製品化されたガットは、素材が同じだったとしても繊維の形状や糸の組み方、どのような化学物質が練りこまれているかなどによって大きく物性が変わります。
これらの前提を考慮しつつ以下の記事をご覧いただければと思います。
【ナイロンVSポリエステル13番勝負】
項目
評価
①耐熱温度
ほとんど同じか、ややポリエステルの方が高い。
②比重
ナイロンの方が軽い。
③引っ張り強さ
ややナイロンの方が優れている。
④伸度
ナイロンの方が良く伸びる。
⑤吸水性
ポリエステルの方が水を吸わない。
⑥乾湿強力比
ややポリエステルの方が優れている。
⑦耐候性
ポリエステルの方が優れている。
⑧耐摩耗性
ややナイロンの方が優れている。
⑨弾性率
ポリエステルの方が高い。
⑩弾性回復率
小変形ならポリエステル、大変形ならナイロンが優れている。
⑪耐衝撃性
ポリエステルの方が優れている。
⑫曲げ疲労耐性
ナイロンの方が優れている。
⑬伸長疲労耐性
ナイロンの方が優れている。
では、それぞれの項目について、あるいは関連する項目をまとめて、ナイロンガットとポリエステルガットの比較をしていきたいと思います。
【①耐熱温度】
「耐熱温度」はどれだけの高い温度に耐えられるかを表します。
「耐熱温度」はほとんど同じか、ややポリエステルの方が高いという評価ですが、両者とも100℃以上の高温に耐えます。日本における真夏でのプレーにおいて、インパクト時の摩擦熱を考慮したとしてもガットの表面温度が100℃を超えることはないので、両者で差は出ないと考えられます。
【②比重】
「比重」はその物質の体積当たりの質量(密度)と基準となる標準物質の密度との比です。
「比重」はナイロンの方がやや軽いです。ですが両方とも水に浮きません。ポリエステルガットを張ると、ナイロンガットを張った時よりも少し重くなると考えられます。恐らく2~3gぐらいだと思います。
ポリエステルガットからナイロンガットにチェンジしたときは重りを貼って調整する必要があるかもしれません。
【③引っ張り強さ・⑬伸長疲労耐性】
「引っ張り強さ」は、どれだけ強く引っ張たらちぎれるかを表し、「伸長疲労耐性」は引っ張り続けられた時に強度がどれだけ変化するかを表します。
「引っ張り強さ」も「伸長疲労耐性」もナイロンの方が優れています。ポリエステルガットよりナイロンガットの方がテンション維持が良い理由はここにあるのだと考えました。
【④伸度・⑨弾性率】
「伸度」は引っ張った時にどれだけ伸びるかを表します。「弾性率」は力を加えられた時の変形のしにくさを表します。高い方が変形しにくいです。
「伸度」はナイロンの方が良く伸びます。「弾性率」はポリエステルの方が高いです。
「弾性率」が低いナイロンは加えられた力に対してより「ひずみ」(≒変形)やすいです。テニスに置き換えるなら、ナイロンガットの方がより衝撃に対してたわみやすいということになります。
これらのことは打感の柔らかさに影響していて、ナイロンガットの方が打感が柔らかいことの根拠になっていると考えられます。
【⑤吸水性・⑥乾湿強力比】
「吸水性」はどれだけ水を吸うかを表し、「乾湿強力比」は湿度が高い時に、乾いた時とどの程度強度に差が出るかを表します。
ナイロンは天然繊維と比べると「吸水性」は低いですが、化学繊維の中ではやや水を吸う方といえます。一方でポリエステルは水をほとんど吸いません。
ナイロンは湿度が高い(≒水を吸った)時に、やや強度が落ちますが、ポリエステルは強度が落ちません。
【⑦耐候性】
「耐候性」は屋外で使用された場合に、変形、変色、劣化等の変質がどれだけ起こりにくいかを表します。
ポリエステルの方がナイロンよりも「耐候性」が高いです。しかし、ポリエステルも傷まないわけではないので、長時間直射日光にさらすとか、風雨にさらすとかはやめた方が良いでしょう。誰もそんなことしないと思いますが。
【⑧耐摩耗性・⑪耐衝撃性】
「耐摩耗性」は摩擦を繰り返し加えられた時にどれぐらい耐えられるかを表します。「耐衝撃性」は質量のある物体を繰り返しぶつけられてどれだけ耐えられるかを表します。
まず、「耐摩耗性」に関してはナイロンの方が優れています。
これを聞いて、「あれ?ポリエステルガットの方が切れにくいけど?」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般的にポリエステルガットの方が切断耐久性に優れていることは経験的にも、データ上でも明らかなのですが、「耐摩耗性」に着目すると、ナイロンの方に軍配が上がるのです。
ではなぜポリエステルガットの方が切れにくいかというと、「耐衝撃性」に関してはポリエステルの方が優れているからです。テニスというスポーツは、ある程度重さとスピードのあるボールがガットに繰り返しぶつけられるので、「耐衝撃性」の影響は大きいと考えられます。
また、ポリエステルガットの方が摩擦を起こしにくい仕組みになっていることも推測できます。ここで「弾性率」にもう一度注目してみたいと思います。
「弾性率」はポリエステルの方が高いです。テニスのガットは縦糸と横糸が交差して編まれているので、ガット同士が押し付けあって接しています。「弾性率」が低いナイロンガットは、よりひしゃげた状態でガット同士が接していることになるので、接地面積が増えて「摩擦係数」が上がると考えられます。
【⑩弾性回復率】
「弾性回復率」は加えられた「ひずみ」(≒変形)に対してどれぐらい元に戻るかを表します。
ポリエステルは加えられた「ひずみ」が小さい時はナイロンよりも高い「弾性回復率」を示し、「ひずみ」が大きくなればなるほど持続的に「弾性回復率」が減少していきます。一方でナイロンは加えられた「ひずみ」が大きくなっても「弾性回復率」をある程度維持することができます。
ガット張りをしたことがある方はご存じだと思いますが、ポリエステルガットは指で少し曲げようとしても曲がりにくく、指を離すと勢い良く元に戻りますが、ある程度角度をつけて曲げると全然元に戻らなくなります。
一方でナイロンガットは簡単に指で曲げられて、指を離した時の元に戻るスピードは遅いですが、90°ぐらいの角度をつけて曲げても90%ぐらいは元に戻ります。
このことがガットの「目ズレ」に大きく影響していると考えられます。
ナイロンガットの場合はインパクトの衝撃によって簡単に変形させられて、それが戻ってきにくいです。またガット同士の「摩擦係数」がポリエステルよりやや高いのもあり、「目ズレ」が目立つのです。
ポリエステルガットの場合、「弾性率」の高さからそもそもガットを大きく変形させることが難しいです。また、ガット同士の摩擦係数がナイロンより低いのもあり、少しの変形は素早く戻り、かなり「目ズレ」は抑えられます。
ラファエル・ナダルやステファノス・チチパス、ダニール・メドベデフ、デニス・シャポバロフ、フェリックス・オジェ=アリアシムらの海外トップ選手達は縦にも横にもポリエステルガットを使用していますが、彼らがガットの「目ズレ」を気にして頻繁に「目直し」をしているでしょうか?
彼らですらポリエステルの「弾性回復率」を大きく低下させるような衝撃をボールに加えられていないのです。
でも、柔らかめのポリエステルガットや、硬いポリエステルガットでも、張ってから時間が経って緩んでいると簡単に「目ズレ」しますよ。
「*スナップバック」は「目ズレ」と反比例する関係であると考えて良いと思います。「スナップバック」が効いている時は「目ズレ」が抑えられているし、「目ズレ」が酷い時は「スナップバック」が効いていません。
小変形における「弾性回復率」の高いポリエステルガットはナイロンガットよりも「スナップバック」が効き、スピンがよくかかると考えられます。
*snap back=跳ね返る・急に元に戻るという意味。テニスにおいては、ずれたガットが素早く戻り、スピン量を増大させる現象をいいます。
【⑫曲げ疲労耐性】
「曲げ疲労耐性」は曲げ続けられた時に強度がどれだけ変化するかを表します。
「曲げ疲労耐性」はナイロンの方が優れています。そして「伸長疲労耐性」もナイロンの方が優れています。
この2つから何がいえるかというと、ポリエステルガットの方が「角切れ」しやすいということです。グロメット付近のガットは曲げ続けられて、伸ばされ続けていますからね。
【まとめ】
項目
評価
関連する物性
打感
ナイロンの方が柔らかい
伸度、弾性率
重さ
ナイロンの方が軽い
比重
水に濡れた時
ポリエステルの方が強い
吸水性、乾湿強力比
外にさらした時
ポリエステルの方が強い
耐候性
テンション維持
ナイロンの方が優れている
引っ張り強さ、伸長疲労耐性
切断耐久性
ポリエステルの方が優れている
耐摩耗性、耐衝撃性、弾性率
目ズレ
ポリエステルの方が抑えられる
弾性回復率
スピン量
ポリエステルの方が優れている
弾性回復率
角切れ
ナイロンの方がしにくい
伸長疲労耐性、曲げ疲労耐性
様々な項目に関連するであろう物性を探し、データとにらめっこする作業はとても大変でした。途中で何度も挫折して諦めそうになりましたが、何とか最後まで書き上げることができました。
誰の為でもなく、自分が気になるから書いた記事ですが、もし皆さんのお役に少しでも立てるのなら嬉しいです。
【参考・引用サイト】
日本化学繊維協会
東レ
帝人
          
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