《これまでのまとめ》
「アルカラスとシナーのライバル関係について その1~幼少期からジュニア時代~」はこちら
雑誌編集者兼フリージャーナリストである神代さん(以下神代と記載)からご依頼を頂き、カルロス・アルカラス(スペイン)とヤニック・シナー(イタリア)のライバル関係について、インタビュー形式でお答えしています。
アルカラスは4歳からテニスを始めて、エリート街道をひらすらに進んできました。14歳からはジュニアの試合と並行してプロの試合にも出場し始め、着実に成果を上げていきました。
シナーは、3歳からスキーを始めて、テニスは7歳からスタート。シナーにとってテニスは3番目のスポーツで、13歳から本格的にテニスに専念することになりました。本格的な転向時期が遅かったものの、16歳頃から徐々に頭角を現し始めました。
《2019年 アルカラス15歳~16歳、シナー17歳~18歳》
神代「先ほど、カルロス・アルカラスは2019年のウィンブルドンジュニア以降はプロの試合に専念しているというお話を聞きましたので、2019年から両者を比較していきましょうか。」
瀬藤「はい。まずシナーは2019年2月のベルガモ・チャレンジャー(イタリア)でチャレンジャー大会初優勝を成し遂げています。それまでにシナーはチャレンジャー大会で1度しか勝っていないのにも関わらずです。ちなみに、この大会での優勝により、シナーは2001年生まれで初めてのチャレンジャータイトル獲得者かつイタリア人で史上最年少(17歳6か月)でチャレンジャータイトル獲得者となっています。」
神代「いきなり驚愕の事実なのですが・・・一足飛びに駆け上がり過ぎてません?」
瀬藤「実はシナーは、2018年の8月に初のATPポイントを獲得して以降、2018年の年末には551位までランキングを上げています。」
神代「どうやら、16歳時点ではグランドスラムジュニアに届かないレベルであったものの、そこから約1年でプロレベルでもある程度勝てるようになったということでしょうか。」
瀬藤「はい。記録を見る限りそのように考えられます。シナーのコーチ陣はジュニアの試合にコツコツ出てランキングを上げてグランドスラムジュニアを目指すというよりは、初めからプロの試合に積極的に出ていくという戦略をとっていたようですね。」
神代「グランドスラムジュニアに出るためには、ITFジュニア大会で順にのし上がっていく必要があり、それはそれで大変だから、いっそプロの試合に出てしまおうと。」
瀬藤「その方が近道だと考えたのでしょうね。コーチ陣はシナーの才能をとても高く評価していたのでしょう。本当はグランドスラムジュニア上位進出者でも、プロのITFやチャレンジャー大会へ移行した時に往々にして苦戦する(2018年にシナーに勝った田島尚輝《全仏ジュニアダブルス優勝》はチャレンジャー大会シングルスで未だに優勝経験がありません)傾向があるのですが・・・」
神代「シナーだからこそ進めた道だというのは多分にあるでしょうね。シナーとアルカラスの初対戦は2019年にあったのでしょうか。」
瀬藤「はい。彼らの初対戦は2019年4月のアリカンテ(スペイン)チャレンジャー大会の1回戦で、当時17歳のヤニック・シナーはワイルドカードで出場した当時15歳のカルロス・アルカラスに敗れています。アルカラスはギリギリプロ入り前ということになりますけれども。」
神代「アルカラスはワイルドカードで出場したと言えども、17歳と15歳がチャレンジャーの舞台で戦うのはすごいことですよね。」
瀬藤「本当に驚きです。シナーはその時16連勝中で、その連勝を止めたのがアルカラスなんです。」
神代「最初の対戦からドラマがあって、これからの二人の強烈なライバル関係を予感させるような一戦になってますね。」
瀬藤「面白いです。ATPノーランカーだったアルカラスは1度ITFで優勝し、チャレンジャーでベスト8に入るなどして492位で2019年を終えています。まだ16歳ですよ。」
神代「同世代のジュニア達がまだグランドスラムジュニアで戦っている中、アルカラスはもう500位を切っちゃっているという。」
瀬藤「グランドスラムジュニアに出ている選手も、プロの試合に並行して出るというのはよくあるので、すでに500位以上になっているケースもちらほらあります。でも、その時の年齢によって価値が変わりますし、プロに完全移行してからが難しいです。ジュニアでいる時は失うものがありませんからね。」
神代「なるほど。ではシナーの2019年はどのような所に行き着いたのでしょうか。」
瀬藤「シナーの2019年はすでにかなり忙しくなっています。3度のチャレンジャー優勝、ATP250でベスト4、ATPマスターズ1000に出場、全米オープンで予選を勝ち上がり本戦出場、11月のNext Gen ATP Finalsで優勝などの輝かしい成績を収めました。」
神代「ものすごい情報量ですね。」
瀬藤「はい。Next Gen ATP Finals 決勝では当時世界ランキング18位だったアレックス・デ・ミノー(オーストラリア)を強打で圧倒して衝撃を受けたのを覚えています。」
| 2019年 | 年初ランキング | 年末ランキング | 優勝回数 |
| アルカラス | ランク無し | 492位 | ITF 1回 |
| シナー | 553位 | 78位 |
ITF 2回、CH 3回 Next Gen ATP Finals 1回 |
《2020年 アルカラス16歳~17歳、シナー18歳~19歳》
神代「さて、2020年ですが、コロナウィルスのパンデミックで世界が一変しました。ウィンブルドンも第二次世界大戦中以来の中止となりました。」
瀬藤「道に誰も歩いていないし、車も走っていない。まるで別世界に来たようでした。店を始めて2年目で、本当に大変な思いをしました。」
神代「本当に大変でしたよね。」
瀬藤「2020年のアルカラスは年初からITFで14連勝するなど好調で、ワイルドカードで出場したリオ・オープン(ATP500、ブラジル)では1回戦で当時世界41位だったアルベルト・ラモス・ヴィノラス(スペインを)フルセットで破っています。」
神代「まだ16歳ですよね。」
瀬藤「そうです。この年のアルカラスは3度チャレンジャー大会で優勝しました。」
神代「かなりの飛躍ですね。グランドスラムへのトライはどうだったのでしょうか。」
瀬藤「全仏オープンの予選に出場しましたが、予選の1回戦で敗れています。この年はパンデミックの影響があり、1年の試合のほとんどをスペインかイタリアでプレーしています。」
神代「ヨーロッパでは試合がたくさんありますものね。わざわざ遠出をしてリスクを負う必要はないということでしょうね。」
瀬藤「シナーの2020年なのですが、全豪オープンでグランドスラム本戦初勝利、2月のロッテルダム(ATP500、オランダ)では当時世界ランキング10位だったダビド・ゴファン(ベルギー)を下して、対TOP10初勝利をあげました。パンデミックの影響で4月から7月は試合がありませんでしたが、時期が9月にずれたローマ(ATP1000、イタリア)では当時世界ランキング6位のステファノス・チチパス(ギリシャ)を破りました。」
神代「対トップ10でも勝利をあげられるようになってきていますね。」
瀬藤「特筆すべきは、9月末に開催となった全仏オープンで、当時世界ランキング7位だったアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)を下してベスト8入りし、当時世界ランキング2位のラファエル・ナダル(スペイン)に挑戦したことです。これはノバク・ジョコビッチ(セルビア)が2006年に記録して以来の最年少ベスト8で、ナダルが2005年に記録して以来の全仏オープン初出場ベスト8でした。」
神代「この試合をきっかけにシナーを知った人も多かったのではないでしょうか。」
瀬藤「そうですね。僕自身、この時初めて彼の5セットをフルで観戦しました。」
神代「その時の印象はどうでしたか。」
瀬藤「はい。当時からかなりストロークは力強くて、特にクロスコートへのコントロールが素晴らしかったです。一方でストレートへの展開は少なくてややワンパターンな印象がありました。サーブも当時はそれほど良くなかったですし、ボレーに至っては他のTOP選手と比べて明らかにレベルが低かったです。」
神代「それでもズべレフに勝てたんですね。」
瀬藤「はい。いつものごとくズべレフはベースライン後方に下がって、あまり積極的に展開していかなかったので、シナーに先に攻められていました。」
神代「ズべレフのよくある負け方ですね。」
瀬藤「はい。さらにシナーは9月にソフィア・オープン(ATP250、ブルガリア)でツアー初優勝を成し遂げました。」
神代「ここでツアー初優勝ですか。着実にステップアップしてますね。2020年には二人の対戦はなかったのでしょうか。」
瀬藤「この年はなかったですね。アルカラスがチャレンジャー大会を主戦場としていたのに対し、シナーはツアー大会が主戦場でしたので。」
| 2020年 | 年初ランキング | 年末ランキング | 優勝回数 |
| アルカラス | 490位 | 141位 | ITF 2回、CH 3回 |
| シナー | 78位 | 37位 | ATP250 1回 |
《2021年 アルカラス17歳~18歳、シナー19歳~20歳》
瀬藤「アルカラスは年初のメルボルン(ATP250、オーストラリア)で3回戦に進出し、全豪オープンでは予選を勝ち上がり本戦でも1回勝ち、グランドスラム初勝利を飾りました。」
神代「おお、すごい!まだ17歳ですものね。ジュニア部門に出ていても全くおかしくないのに。」
瀬藤「ちなみに、この年の全豪オープンではジュニア部門は開催されていません。」
神代「まだパンデミックの影響が残っているということですか。」
瀬藤「シナーは年初のメルボルンで優勝を果たしたのですが、全豪オープンでは1回戦でデニス・シャポバロフ(カナダ、12位)にフルセットで敗戦しています。シードにギリギリで入れなかったので1回戦から強敵と当たってしまいました。」
神代「シードを取れるかどうかで全然違いますね。」
瀬藤「アルカラスは2月3月とツアー大会に積極的に挑戦するも1回戦負けが続きましたが、4月のマルベリャ(ATP250、スペイン)で準決勝に進出し、5月のマドリッド(ATPMasters1000、スペイン)」にワイルドカードで出場して1回戦を突破し、同郷の先輩であるラファエル・ナダル(スペイン、2位)に挑戦しました。
神代「ついにマスターズでも勝ちを収めましたね。」
瀬藤「その後の全仏オープンでは予選を勝ち上がり、本戦でも3回戦に進出しました。」
神代「大躍進ですね。やはりクレーが強い。」
瀬藤「シナーは3月に行われたマイアミ(ATPMasters1000、アメリカ)で決勝進出する快挙を成し遂げました。」
神代「素晴らしい活躍です。」
瀬藤「その後のクレーシーズンにおいても順調に勝ちを積み重ね、バルセロナ(ATP500、スペイン)ではベスト4に入り、全仏オープンではベスト16入りを果たしました。」
神代「シナーもクレーが強いですね。」
瀬藤「そうですね。イタリアはクレーコートが多いですから」
神代「全仏オープン後の二人の活躍はいかがでしょうか。」
瀬藤「アルカラスは全仏オープン後、前哨戦を挟まずにウィンブルドンに出場し、1回戦で内山靖崇(日本、116位)にフルセットで勝利し、ウィンブルドン初勝利を飾りました。」
神代「確か内山選手もこの時にウィンブルドン本戦初出場でしたよね?」
瀬藤「そうです。お互い勝ちたかった試合ですね。その後アルカラスは2回戦でダニール・メドベージェフ(ロシア、2位)にストレートで敗れています。」
神代「1回戦の疲れがあったかもしれませんね。」
瀬藤「そうですね。ウィンブルドン後のウマグ(ATP250、クロアチア)では、ツアー初優勝を成し遂げました。これは2008年に錦織圭が記録して以来の最年少ツアー優勝となりました。」
神代「素晴らしい記録ですね。それにしても錦織選手の初優勝は2008年ですか。今から17年も前なんですね。」
瀬藤「だいぶ時が経ちましたねぇ。その後アルカラスはウィンストンセーラム(ATP250、アメリカ)でベスト4に進出し、全米オープン3回戦ではステファノス・チチパス(ギリシャ、3位)にフルセットで勝利し、対トップ10初勝利をあげました。この試合後のインタビューでチチパスは、”こんなにハードヒットされたのは初めてだ”と語っています。」
神代「チチパスの発言は、アルカラスの特別さをよく表していますね。」
瀬藤「本当にそう思います。アルカラスは4回戦もフルセットで勝利しますが、準々決勝では脚の負傷のため棄権してしまいました。ただ、18歳4カ月での準々決勝進出はオープン化以降の最年少記録となっています。」
神代「今度はオープン化以降の最年少記録ですか!とんでもないですね。」
瀬藤「全仏後のシナーですが、ウィンブルドン前哨戦もウィンブルドンも1回戦で敗退しています。まだ芝の経験が浅く、アジャストできていないようですね。」
神代「なるほど。」
瀬藤「シナーの北米シーズンですが、ワシントン(ATP500、アメリカ)で優勝しました。この優勝はイタリア人としてこの大会初のチャンピオンであると同時にATP500のカテゴリーが設定されてから最初の10代のチャンピオンとなりました。」
神代「幸先がいいですね。」
瀬藤「続くトロント(ATPMasters1000、カナダ)とシンシナティ(ATPMasters1000、アメリカ)ではあまり振るわなかったものの、全米オープンではベスト16に進出しました。」
神代「安定して好成績を出していますね。全米後の二人の活躍はどうだったでしょうか?」
瀬藤「全米後のアルカラスですが、ウィーン(ATP500、オーストリア)でベスト4に進出し、パリ(ATPMasters1000、フランス)」では2回戦でヤニック・シナー(イタリア、9位)と対戦し、7-6(1)7-5で勝利しました。3回戦ではウゴ・ガストン(フランス、103位)に敗れています。
神代「ここで2回目の直接対決ですね。アルカラスから2連勝です。」
瀬藤「そうですね。その後アルカラスはNext Gen ATP Finalsに出場し、全勝優勝を成し遂げました。」
神代「素晴らしい活躍です。」
瀬藤「全米後のシナーですが、ソフィア(ATP250、ブルガリア)とアントワープ(ATP250、ベルギー)で優勝、ウィーン(ATP500、オーストリア)ではベスト4に入っています。」
神代「インドア強いですね。」
瀬藤「パリでは2回戦でアルカラスに敗れました。その後ATP Finalsに初出場し、フベルト・フルカチュ(ポーランド、9位)に勝利しましたが、ダニール・メドベージェフ(ロシア、2位)に敗れ、ラウンドロビン突破とはなりませんでした。」
神代「19歳でATP Finals出場はすごすぎます。」
| 2021年 | 年初ランキング | 年末ランキング | 優勝回数 |
| アルカラス | 141位 | 32位 |
CH 1回、ATP250 1回 Next Gen ATP Finals 1回 |
| シナー | 36位 | 10位 | ATP250 3回、ATP500 1回 |
この話、続きます!次回をお楽しみに♪
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