皆さんは、スナップバックという言葉を見たり聞いたりしたことがありますか?
スナップバックとは、ラケットのガット面とボールが衝突した時に、ガットの縦糸が横糸の方向に移動してから元に戻るという現象です。横糸が縦糸方向に移動してから戻る現象も同様です。
このスナップバックによって、ボールにかかるスピン量が増大します。今トッププロのほとんどが使っているポリエステルガットは、ナイロンガットよりガット同士の摩擦が少ないし復元力が高いのでスナップバックがより効ききます。
そういうわけでトッププロの間でポリエステルガットが選択されているわけなのです。*スナップバックのみで全てのスピン量を表現しているわけではないのでご注意ください。
さて、このスナップバックですが、ボールを繰り返し打っていると、その効果はどんどん減少していきます。
なぜなら、ガットが動いて戻る現象を何回も繰り返しているので、ガット同士が何度も何度もこすれ合っているわけです。そうすると縦ガットと横ガットの交差部分に溝(ノッチ)ができます。
ノッチができると摩擦が大きくなるのでガットが段々動きづらくなります。ガットが動きづらくなるとスナップバックが効かなくなってくるのでスピン量が減少します。
研究では以下のように述べられています。
プロ・テニスプレーヤーが試合に使った後のラケットのノッチの出来たガットでは,スピン量が平均 70 % 低減し,接触時間は平均 13 % 短くなった。
引用元:川副嘉彦,武田幸宏・中川慎理,“テニスラケットのスピン性能におよぼすガット・ノッチの影響(スピン量・接触時間・打球速度の超高速ビデオ画像解析)”,日本機械学会論文集 C 編, Vol.76, No.770, C, (2010), pp.2646-2655.
以上をまとめると、繰り返し打球すると、ガットの交差点にノッチができます。ノッチができるとスナップバックが減退します。スナップバックが効かなくなるとスピン量は減ります。スピン量が減るとボールの威力は落ち、コントロールも定まらなくなってくるのです。
このことは『ガットは切れなくても張り替えなければならない』理由のひとつを示しています。ノッチができてきたら早めに張り替えていただくとより快適にプレーができるはずです!
ここでちょっと裏技を紹介!
これは 『String Glide』といいまして、シリコンオイルでございます。これをガットに塗り塗りすることで摩擦が減り、スナップバックがより効くという代物です。
ちゃんと研究でも結果が出ておりまして・・・・・・・・・
一般の潤滑剤として手に入りやすい WD-40 を用いて多くの種類のラケットについて実験した結果によると,潤滑剤を塗った場合の方が 14 – 58 % スピンが増大した.
引用元:Haake, S., Allen , T., Jones , A., Spurr , J. and Goodwill1 , S., ” Effect of inter-string friction on tennis ball rebound”, Journal ofEngineering Tribology, Vol. 226, No. 7 (2012), pp. 626-635.