テニスの時にすぐ息があがる、すぐ疲れてしまう、どうしたらいい?その2~テニスに特異的な対策~

【はじめに】
前回の記事でテニスをプレーしている時におけるエネルギー供給機構の仕組みを説明していきました。
まず、テニスは切り返しを伴う短いダッシュとスイングが、休みを交えながら断続的に続くというスポーツです。
また、テニスの1ポイントの時間の多くは5秒から30秒の間に収まるということで、『ホスファゲン機構』と『速い解糖』を主に活用しています。
それらを押さえた上で、テニスをしている時の『心肺的疲労』や『全身の倦怠感』をどう軽減していくかを考えていきたいと思います。
【具体的な対策】
《1》きちんとたべる
当たり前のことですが、空腹だと筋グリコーゲンや血中グリコーゲンが不足している状態なので、『速い解糖』がうまく回らず疲労感は大きくなります。当然パフォーマンスも低下します。炭水化物とタンパク質をしっかりとって準備しておきましょう。
また、ミネラルの補給も忘れずにしましょう。特に夏場はナトリウムやカリウムが排出されやすいので、事前に摂取しておくことが必要だと思います。僕は夏場はレッスンへ出発する前に食塩をひとつまみとカリウムの錠剤を摂取します。
※腎臓の機能に疾患がある方は塩分の摂取をコントロールしてください。また、普段の食事が濃いめの味付けの方も気をつけましょう。
《2》テニスの練習頻度を上げる
これも当たり前といえば当たり前なのですが、練習頻度を増やすことにより、自然とテニスをするための体力は向上していきます。
これを科学的に説明すると、トレーニングの原則に『特異性』という要素があり、これは、特定の手法を用いることで、その手法による特殊な適応、または特殊なトレーニング効果が得られること、を意味します。
よって、テニスをする時の体力はテニスをすることで効率的に向上します。
例えば、週1のペースを週2にすると全然違います。週2を週3にすることでも変わるでしょう。これをさらに進めて週6・7にしていけばさらに良いのかというと、テニスをした時の筋肉疲労が回復しきらないということも考えられるので、やればやるほど良いというわけではありません。
ここで大事なのは、一日に長い時間行うというよりは、頻度を増やす方が効果的だということです。長い時間行ってバテた状態からさらに続けたとしても、『酸化機構』により多くの負荷をかけることになるからです。
なお、テニスをすることによって向上する体力には限界があります。部活などで週5・週6でテニスをしている方はすでに伸び白をほとんど使ってしまっている可能性があります。そこからさらに伸ばしたい時は別のアプローチが必要でしょう。
《3》フットワーク練習
フットワーク練習の主目的はフットワークを向上させることですが、体力が向上する側面もありますので、ぜひ取り入れたいところです。
それでは、下の図を参考にしながら説明していきます。
①は、センターマークからスタートし、各コーンにタッチしてセンターマークへ戻り、反時計回りに繰り返していくトレーニングです。素早い加速・減速・方向転換が求められます。センターマークへ戻る時はおへそをセンターマークへ向けて走ります。20秒ぐらいで終わりますので、『速い解糖』にもそこそこの刺激が加わります。
なお、休憩時間は1分半程とりましょう。※『速い解糖』にフォーカスしたトレーニングでは、運動時間:休息時間を1:3~1:5にすることが推奨されています。
②はいわゆる『Tテスト』です。体力テストで敏捷性を測るために行われます。センターマークからスタートし、前のコーンまでダッシュし、コーンの根元に触れます。そして左のコーンにサイドステップで進み、コーンの根元にタッチ。次は右のコーンに向かってサイドステップし、コーンの根元にタッチ。中央のコーンまでサイドステップしてコーンの根元にタッチしたら、バック走でベースラインに向かって走ります。10秒ほどで終わるので、より『ホスファゲン機構』への刺激にフォーカスしたドリルだと言えるでしょう。
このドリルでは2分程の休憩を入れましょう。※『ホスファゲン機構』を鍛えるトレーニングでは、運動時間:休息時間を1:12~1:20にすることが推奨されています。
③はラケットを持って行うフットワーク練習です。テニスという運動にはスイングするという要素があるので、よりテニスという運動の『特異性』にマッチしています。
まず、センターマークからスタートし、ボールを追いかけているつもりで顔は前を向いたまま斜め後ろに走り、コーンの真上をインパクトと想定し、スイングします。スイングしたらサイドステップでセンターマークへ戻ります。次は右斜め前のコーンに向かってダッシュしてスイングし、サイドステップでセンターマークへ戻ります。そして左斜め前のコーンに向かってダッシュしてスイング。サイドステップでセンターマークまで戻ります。最後は左後ろのコーンへ、顔は前向きで走ってスイング。そしてサイドステップでセンターマークへ戻ります。
20秒ぐらいかかりますので、『速い解糖』にもそこそこ刺激が加わります。休憩は1分半程度です。
ちなみに、コーンの数を増やして遠くに設置すると、40秒を超えるようなボリュームにできますが、『速い解糖』にかなりの負荷がかかり、めちゃくちゃしんどいです。そして、これをやってしまうと、『筋グリコーゲン』を大量に消費してしまうので、やるならメニューの最後がいいでしょう。
もし筋グリコーゲンを完全に消費してしまったら、適切な食事をとっても完全回復まで24時間かかります。間違っても、練習の最初にやらないように(笑)
《4》相手を先に振り回す
テニスは相手があるスポーツで、相手は自分に勝とうと攻めてきます。当然相手と自分が同じ運動量ということはほぼありえません。相手が先手を取って攻め続けている状態では、相手はあまり疲れないし、こちらはどんどん疲れます。もちろん、抜群の体力とフットワークを身につけて、相手の攻撃に対して全てディフェンスしつづけたら、相手にプレッシャーがかかって自滅することも十分あり得ますが、やはり消耗が多く、次の試合に影響してしまうでしょう。しかも、一般の試合では1日5試合することもありえますので、なるべく省エネしたいところです。
より、スマートに疲労感なく勝つには自分から先に展開していくこと、少ないラリー数で終わらせる展開を考えること、それを可能にするために一球一球のボールの精度が大事になってきます。
【おわりに】
テニスに限らず、運動には疲労はつきもの。疲労があるとパフォーマンスは低下してしまいます。これは根性論ではどうしようもありません。精神力を鍛えても無理です。エネルギーが枯渇していたら動けません。私達に必要なのは科学的に考えてスマートに実行することです。
最後に、テニスをする時における『心肺的疲労』対策を簡単にまとめると、きちんと食べ、練習の頻度を増やし、さらにフットワーク練習をし、テニスをする時は相手を先に振り回すよう工夫する。これらを実行していけばよい方向に進むはずです。
次は『テニス後の疲労を早く取り去る為にはどうしたらいいのか』について考えていきたいと思います。
お楽しみに★★
                        
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