プラトーやスランプに陥ってしまった時の対処法~テニス編~

テニスを始めてしばらくはやればやるほど上達していって毎回楽しいですが、ある時、急にプレーのレベルが停滞したり、以前よりもプレーのレベルが落ちてしまうことがあります。そしてそれが長く続くことさえあります。
ここでは、プレーのレベルが停滞することをプラトー(plateau,景気や学習の高原状態)、プレーのレベルが落ちてまうことをスランプ(slump,急に衰える)と定義します。
プラトーやスランプの原因は何なのか、その対処法は何であるのかを考えていきたいと思います。
【プラトーの原因と対処法】
プラトーは全てのプレーヤーに頻繁に起こります。テニスを始めたての頃やジュニアであるならまだしも、大人の方であるならば身体能力がどんどん上がっていくわけではないので、いずれはプレーレベルの停滞が起こります。これは学習や筋力トレーニングでも同じです。ではプラトーの原因と対処法を考えていきましょう。
①練習メニューがいつも同じ
これについては、僕もよくやってしまっていて、自戒をこめて言います。コーチは試行錯誤を繰り返す中でこのメニューが良い!とたどり着くのですが、それをずーっと繰り返すのは良くないです。たとえそのメニューが優れていたとしても生徒さんは飽きてしまいます。そうなれば体への刺激が少なくなり上達を阻害してしまいます。コーチはこのメニューがある程度出来たら次へ行こうと計画しているかもしれませんが、飽きさせてしまったら元も子もありません。コーチは同じ目標を達成するために複数のアプローチを用意しておくべきでしょう。
もし、皆さんがスクールに所属してレッスンを受けていてずーっと同じメニューをこなしているとしたら、コーチに「違うメニューもしてくれませんか?」と頼んでみても良いと思います。ただ、スクールで決められたメニューがある場合は難しいでしょうね。そういう場合は振替や追加受講の制度を利用して違うコーチのレッスンを受けると、例え同じメニューだったとしても教え方が変わりますから、ある程度新鮮さを味わうことができるでしょう。
違うスクールのレッスンを受講したり、プライベートレッスンをしているコーチを探して受講してみるのも良い手だと思います。コーチが変われば当然メニューも変わるので良い刺激を得られると思います。
②練習の量がいつも同じ
これについては、たとえ週6回テニスを練習していたとしてもずっと同じだとプラトーの原因になりうるのです。練習量の多い少ないは問題ではありません。
練習量に変化を持たせるために、週6回のテニスをある時は週5回や週4回にしてみたり、週6回は変えないけどその中で微妙に練習時間を増やしたり減らしたりして変化をつけていくと良いでしょう。練習を減らした分は疲労回復にあてたり、トレーニングにあてたりするなどして工夫するとなお良いですね!
元々週1回や2回など練習量の少ない方は短期集中で練習量を増やし、プラトーを打ち破ろうとするのはよい案です。ただ、その際も質の良い練習をする必要があるでしょう。
【スランプの原因と対処法】
次は「スランプ」について考えていきたいと思います。ある人は「プラトー」状態が長く続き、やがて「スランプ」陥ってしまったり、またある人は突然「スランプ」に陥ってしまったりします。私たちは時としてなぜ、スランプに陥ってしまうのでしょうか。その原因や対処法を探っていきましょう。また、以下に記載する事柄はプラトーの原因でもあるので、「私にはスランプは無縁!」と思っている方も是非知って頂きたいです。
①オーバーワーク
練習やトレーニングのし過ぎで疲労困憊しているとスランプの原因になることがあります。疲労が溜まると筋肉や関節の柔軟性が低下し、また神経の出力も低下してしまうため、発揮されるパワーが減ります。それを力んで何とかしようとするとフォームが崩れていってさらにパフォーマンスが落ち、気づけば元のフォームとはかけ離れたものになってしまいます。そうなってしまうと本格的なスランプ入りです。
まずは、「最近何かおかしいな?」と感じていて、かつ練習やトレーニングを激しくしているならオーバーワークを疑いましょう。部活など自分でコントロールできない部分もあるとは思うのですが、スランプを通り越して怪我で長期離脱になってしまうと最悪ですので、勇気を出して休養をとりましょう。またストレッチをして日頃から身体の状態に向き合っていくことも大切です。もし、ストレッチを毎日続けていて、以前より身体が硬くなっている状態が続いていると感じたら、それはオーバーワークのサインであるかもしれません。
②プレッシャーや不安
キャプテンになった、エースになった、レギュラーの座を守らなくてはいけない、本戦に上がらないといけない、全国大会に行かないといけない、ポイントを獲得しないとランキングが落ちる、早期敗退を繰り返している、監督やコーチ、仲間から期待されている・・・
一般の愛好家の方でも、運動不足解消で始めたつもりが、知らず知らず上手くなりたい、レベルアップしたい、試合で勝ちたいなど、テニスをする目的やモチベーションが変わってくる人は多くいらっしゃいます。どんどん競技志向になっていくとテニスの新たな面白さを味わうことができますが、一方でプレッシャーや不安と向き合うことになります。
プレッシャーや不安は身体を緊張させ、プレーを硬くします。それがあまりにも長く続きすぎるとフォームが崩れてしまい本来のプレーを思い出せなくなってしまうことさえあります。
この状況を改善するためには、まずは自分がそもそも何故テニスをやっているのか、続けようと思ったのかに立ち返ってみると良いでしょう。恐らく多くの方がテニスをすることが楽しくて好きだからプレーしているはずです。健康増進の為だとか友達や親の勧めで始めたなどきっかけは様々でしょう。しかしテニスをすることに面白みを感じていなかったのなら続けてこなかったのではないでしょうか。あなたがテニスをやっていて、楽しかったシーンをできるだけたくさん思い出します。そしてコート上では雑念を払い、もっとボールに集中し、ボールの軌道、インパクトの感触や音を無心で味わってみてはいかがでしょうか。
また、プレッシャーや不安に悩まされる自分の頭を違う要素で強引に埋めてしまうというのも有効だと考えます。具体的にどうするかというと、プレッシャーや不安が自分を襲ってきたら、あらかじめ用意しておいた自分のやるべきことを3つぐらい頭に思い浮かべるのです。例えば、「良いプレーができるか不安だ」というマイナスの感情が浮かんだら、「ボールの軌道を読む」「足を動かしてボールをバランスよく捉える」「脱力してボールを打つ」などのチェックポイントを強引に頭に詰め込みます。もう一つ例をあげると、「あの人は上手にプレーできているのに自分は上手くプレーできていなくて悲しい」が浮かんだら「重心を低く保つ」「足を動かして身体の向きを変えて狙いやすくする」「バックハンドストロークの時にリラックスしてラケットヘッドを降ろす」など、今あなたがやるべきこと、取り組んでいることを思い浮かべます。今仮に3つのチェックポイントを頭に浮かべるとしましたが、その場面や個人に応じて1つや2つでも良いでしょう。
これはワーキングメモリの容量が限られている(同時にたくさんのことを意識できない)ということを利用したテクニックです。技術を習得するときには厄介(例えば初心者がボレーを習得する時に「手首を固定」「足を動かして距離を合わせる」など、同時に二つのことを意識するのは困難)なのですが、マイナスの思考を積極的に排除する時には役立ちます。色々な場面において今あなたがやるべきこと、あなたが今取り組んでいることを挙げていってみましょう。人は方針がはっきりしているときは迷いなく動けるものです。
以上のように述べていきましたが、突き詰めて考えていくと「テニスが上手くいかなくても命をとられることはない」ので、自分を追い詰めないで気楽にやれば良いと思います。
③情報過多
ひと昔前まではコーチに教えてもらったり、本や雑誌を読んでテニスに関する知識を増やしたり、ノウハウを学んだりしていましたが、今やYouTubeを始めとするインターネットが様々な知識やノウハウをいつでも、また多くの場合は無料で提供してくれています。すごく便利な時代になりました。私もYouTubeをよく見ます。
しかしその中には、本や雑誌などと同様に、間違っていること、今の時代に合っていないこともたくさん含まれています。動画に出ているプロの選手や上手い方が実演を交えて説明していたら説得力を感じるでしょうが、間違った情報をもとに自分の動きを修正しようとすると上手くいきません。
仮にその情報やノウハウが正しかったとしても、もしかしたら今のあなたの関節可動域や筋力では再現できないかもしれません。また情報過多になることによって身体が本来のスムーズな動きを失う可能性もあります。私たちはたくさんの情報を意識しながら身体を上手く動かすことはできないのです。先ほども触れたように、「ワーキングメモリには限界がある」からです。
もしあなたがスランプに陥っていて、かつYouTubeなどの媒体でたくさんの情報を取得した結果混乱しているのであれば、一度そこから離れてみて指導力の高いコーチに教えてもらうのが良い方法かもしれません。
④栄養や休養が適切でない
いくら質の高い練習を多くこなしていたとしても、栄養や休養が適切でないと良いパフォーマンスを発揮することを妨げてしまうでしょう。人によっては短期的に食生活が偏ったり、睡眠時間が減ったりしてもそれほどパフォーマンスに影響を与えないかもしれませんが、それが長期に渡ったとしたら徐々に健康を損なってしまいます。もし健康が損なわれたら良いパフォーマンスを発揮するどころの話ではなくなってしまいます。
この状況に陥らない為には、ごく簡単に言うと、「極端な行動は避ける」という考え方が大切です。具体例をいくつか挙げていきたいと思います。
〈1〉過度な減量を避ける
過度な減量をすると筋肉が多く減ってしまいます。またエネルギー不足になるので体力や集中力が落ち、練習の質が下がります。
〈2〉過度な増量を避ける
パワーアップするために増量するアスリートがいますが、急激に増量した場合は、それが薬物の力を借りていない限り、増量した体重の多くが脂肪によるものです。仮に筋肉で増量でき、筋力アップできたとしても、身体が重くなった分スピードは低下するかもしれないので、身長が伸びているのではない限り大きく増量することは避けた方が良いでしょう。
<3>バランス良く食事をする
穀物・肉類・魚介類・乳製品・野菜・きのこ・果物・ナッツ類など、色々な種類の食材をバランスよく食べるのが良いでしょう。アレルギーや既往症がある場合には注意しなければなりませんし、嫌いな食べ物を無理に食べる必要はありません。しかし例えば白米はGI値(食後血糖値の上昇度を示す指数)が高いから避けるとか、グルテンフリーが良いみたいだから小麦をカットするとか、赤身肉がヘルシーだから牛の赤身肉ばかり食べるとか・・・・こういう極端な食生活は避けた方が良いです。
もし白米のGI値の高さが気になるのであれば、GI値の低い食材を組み合わせて食べれば良いし、グルテン不耐症の人でなければグルテンフリーにしたところで何も健康に良いことはないです。また、赤身肉を摂りすぎている人は心疾患による死亡率が高くなるというデータがあります。
そもそも私たち人間は太古の昔から、色々な食物をバランスよく摂って繁栄してきました。栄養源となる食物の種類が多ければ多いほど、気候変動や生態系のバランスの変化によるリスクを軽減できます。またどんなビタミンもミネラルも、栄養成分表に載っていない微量元素も摂りすぎてしまえば毒になります。ですのでバランスよく食べることが特定のビタミンやミネラル、その他微量元素の摂りすぎを防ぐのです。
<4>睡眠不足を避ける
睡眠不足だと体力や集中力が落ちてしまうことは多くの方が経験していると思います。ではどれぐらい睡眠をとれば良いのでしょうか。多くの研究で、「7時間~8時間程度の睡眠を取る層は死亡率が低く、7時間以下の睡眠をとる層でも8時間以上の睡眠をとる層でも死亡率が上がる*」ということが報告されています。*20歳未満は対象外
睡眠時間が短くなると免疫力の低下、集中力や記憶力の低下、疲労回復が遅れるのみならず高血圧や肥満、ガンや認知症、うつ病発症のリスクを増大させます。
一方で、睡眠時間が長くなっても死亡率が上がります。しかし、睡眠時間と死亡率の因果関係は今のところ明らかにされていません。恐らく元々身体が弱い方や病気がちの方は多くの睡眠時間を必要としているのではないかと思いますが、確かなことはわかりません。
睡眠時間を削ることは命を少しずつ削っていっているようなもので、気づいた時にはもう遅いということになりかねません。ですので、最低7時間寝ることを基本にし、筋肉痛があったり疲労がたまったりしている場合はもう1~2時間足すのが良いと思います。もちろん、低年齢になればなるほどより必要な睡眠時間は長くなります。
【おわりに】
以上のようにプラトーやスランプの原因とその対処法を考えていきましたが、いかがでしたでしょうか。テニスを長く続けているとプラトーを必ず経験しますし、スランプに陥ることもあるでしょう。大切なことは、落ち着いて原因を探り、対処法を見つけることです。今回の記事が皆さんのお役に立てば嬉しいです。僕が紹介したこと以外にもプラトーやスランプの原因や対処法はたくさんあると思います。もし思いついた方は教えて頂けるとありがたいです。お待ちしております!
                          
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