バドミントンガットの張替えをテニスショップに任せても大丈夫?

【はじめに】
兵庫県西宮市にテニスショップとしてスタートしたラパンブラン。今ではテニス・ソフトテニスのみならず、バドミントンのお客様も多数ご来店されて、今では月当たりの張り上げ数の約5割を占めるほどになっています。
今回は、なぜテニスショップであるはずのラパンブランがバドミントンプレーヤーの皆様から受け入れられるようになったのかを掘り下げ、今後さらなるサービス向上のために何が必要かを考えていきたいと思います。
【バトミントンのお客様からのお問い合わせ】
2018年10月にテニスショップとしてスタートしたラパンブランですが、開店後しばらくしたあたりから、バドミントンのお客様から「ガットを張り替えてくれないか」とお問い合わせを頂くようになりました。しかし、バドミントンのガットを店に置いているわけではないし、その当時はバドミントンガットを張ろうとも張れるとも思っていなかったので全てお断りしていました。
でも、段々お問い合わせの数が増えてきて、「これほど需要があるのなら、チャレンジしてみるのも良いのではないか。」と考えるようになり、バドミントンラケットとガットを仕入れてガット張りの練習を始めることにしました。
【一筋縄ではいかなかったバドミントンガット張替え】
意を決してガット張りの練習を始めたわけですが、私自身バドミントン経験がなく、バドミントンに関しては全くの素人でした。それゆえ、まずラケットのストリングパターン(縦糸を何本張って横糸を何本張るか)がわからないし、どこが縦用の孔(あな)でどこが横用の孔なのかもサッパリでした。これらに関してはテニスラケットにおいてもたまにあるので、ネットでガットが張られている画像を調べれば解決なのですが・・・・・
実際に画像を見てみると網の目が非常に細かいのです。一体縦何本張ってて横何本張ってるんだ?と何度も確認しなければなりませんでした。確認したところ、縦が22本で横が21本!?「こんな小さい面にどれだけガット張るねん!」と一人でつっこんでいたのを覚えています。
バドミントンをプレーしている方にとっては当たり前なのですが、普段テニスをやっている人間からすると驚きの事実なのです。テニスラケットのストリングパターンは細かくても縦が18本で横が20本ですからね。めちゃくちゃ古いラケットで横が21本というのもあるにはありますが。
張り方を画像で確認し終わってやっと張り始めたわけですが、めちゃくちゃ作業が細かいと感じました。普段テニスラケットを張る感覚が身体に染みついているからこの細かさには難儀しました。しかも糸がめちゃくちゃ細い!テニスのガットの太さって大体1.25mmとか1.30mmなのですが、バドミントンのガットの太さは0.65mmや、もっと細いのでは0.61mm等もあり、すごく繊細な扱い方が要求されると感じました。当然めちゃくちゃ時間がかかって、一本張り終えるだけでヒィヒィ言ってました。
こんなので大丈夫かいなと不安に思いつつ、ひたすら練習を続けました。
【トラブル続出で心が折れそうに!】
練習を重ねてスムーズに張れるようになってきたので、売れ筋のガットをいくつか揃えていよいよ実戦に臨みました。初めてのお客様がご来店され、張替えの依頼を受けた後、預かったラケットをネットで検索して張り方を調べて張り上げです。ミスがないように画像を何度も確認して張り方を頭に入れます。やはり練習と実戦では緊張感が違うので、スムーズにとはいきませんでしたが、何とか無事張り上げました。
その後、バドミントンガットを張る機会が少しずつ増えてきましたが、かなりの数の失敗を重ねました。結び目をつくる時に力が入りすぎてガットが切れる、ガットを通しにくい孔を広げようとして千枚通しを入れた時にガットを突いてしまい切れる。機械でテンションをかけた時にグロメット(フレームの孔につけてあるガットやフレームを保護するための部品)が外れてガットが切れる。クランプ(ガットを固定しておく爪のようなもの)の締め付けが緩すぎてガットが切れるなど、作業中にガットが切れる事故が多発し、バドミントンガットの張替え依頼が来るたびに緊張感が走りました。
張り上げ中特に問題がなかったかのように見えても、お客様に渡してから不具合が発覚することもありました。あるお客様のガットを張り上げた時には、「ヘアピンを一回だけ打ってケースにしまっていたら翌日切れていた。どんな張り方をしてんねん!」と怒号を浴びせられました。張り直させて頂けないかお願いしましたが取り合ってもらえず、料金を返金することになり、帰り際に「二度と来るか!」と吐き捨てられたのです。これには相当ショックを受けて、もうバドミントンのガット張るの辞めようかなと思ったほどです。
【やっと見えてきた光明】
とても順風満帆とは言えなかった滑り出しでしたが、もがき苦しむ中、何かヒントを得ようと思い、動画を見て勉強したり、メーカーの方に相談したりもしました。いろいろ勉強していろいろ試して張り上げて来た結果、少しずつ張りの精度が上がり、お客様の数が増えてきました。お客様の数が増え、経験をたくさん積んでいくことによって様々な成長を実感できるようになりました。
ある時から、ガットを張る際に何も考えずに勝手に手が動くようになっていました。速ければ速いほど良いというわけではありませんが、一定のテンポでスイスイ張り上げられるようになり、張っていて楽しいなと思えるようになりました。張りの精度も向上し、細かいミスがなくなりました。
一番嬉しかったのはやはりお客様からのお声です。「バドミントン専門店と比べても張りが安定している、テンションロスが少ない、ガットが切れにくい。」という評価を頂けるようになり、口コミでのお客様が増えていきました。その時に「やっとここまでこれたんだ。」とホッとすると同時に自信がわいてきました。
【バドミントンのガット張りはシンプル】
ある時、メーカーの方とお話をしている中で、こんなご意見を聞くことができました。「3種(硬式テニス・ソフトテニス・バドミントン)張ってらっしゃる店舗さんは、バドミントンが難しいと良く聞きますけど、硬式テニスが一番複雑ですよ。」
その時は「そうなのかなぁ。バドミントンが一番難しいけどなぁ。」と心の中で思っていましたが、経験を重ねていく中でその意味が納得できるようになりました。
まず、ストリングパターン(縦ガットの本数と横ガットの本数の型)や張り方のパターンがシンプルであることです。
縦の本数は22本でほぼ決まっていて、横の本数はほとんどの場合21本もしくは22本の2パターンです。よって、ストリングパターンは22×21もしくは22×22の2つを想定しておくとほぼ対応できます。硬式テニスだと縦の本数は16本もしくは18本、横は16本・17本・18本・19本・20本とバラエティに富んでいて、幅広い対応が求められます。
張り方のパターンに関しては、縦22×横21に対して2パターン、縦22×横22に対して2パターンを考えておけばほとんどの場合対応できることがわかりました。
次に、バドミントンラケットの種類がそれほど多くないことです。当店に来られるお客様のラケットメーカーはYONEX・Wilson・prince・GOSEN・mizuno・Dunlop・Babolat・Li-Ning等ですが、その9割以上がYONEXですので、バドミントンの経験がない私でも何年か張替えを経験すると、張ったことがあるラケットやその後継機種しか見なくなってきました。張り方のパターンもメーカーによってほぼ変わりなく、Babolatが特徴的だということぐらいを気にしておけば大丈夫だとわかりました。
硬式テニスは、ラケットメーカーの豊富さや各メーカーごとのラインナップの豊富さもさることながら、20年前や30年前のラケットが張替えに出されることも珍しくありません。それらは他のお店で張替えを断られたものばかりなのですが、フレームに深い亀裂が入っていなければ張れるので対応することが求められます。せっかく来てくださったお客様の依頼を断ることはできるだけしたくないですからね。
一方でバドミントンラケットはフレームがそれほど丈夫でないうえ、グロメット(ハトメ)が1か所でも無くなっていたり完全に壊れていたりするとテンションを加えた時にガットがフレームに当たって切れてしまい、張り替えることは不可能です。それゆえ、20年以上前のラケットが今だにガットを張れる状態で保存されているケースはまれです。
最後に、バドミントンのガットの種類はそれほど多くないということです。一般的に出回っているバトミントンガットはナイロン-マルチフィラメント1種類のみですが、テニスの場合はナイロン-モノフィラメント・ナイロン-マルチフィラメント・ポリエステル-モノフィラメント、ポリエステルモノ-ナイロンマルチフィラメント、ポリエチレン、ナチュラル等多岐に渡ります。それぞれに硬さや滑り等の特性が違うので扱いに気をつけなければなりません。
これらを総合すると、バドミントンのガット張りはテニスのガット張りに比べてシンプルであると考えるのはそれなりに納得がいきます。
【これからのバドミントンガット張り】
バドミントンのガット張りはテニスに比べてシンプルである可能性について考えてきましたが、たとえシンプルであるからといってイージーであるわけではありません。シンプルであるからこそ、ガットの違いやその他の要素でごまかしがきかず、ストリンガーの実力が如実にでるということを示唆しています。
また、バドミントンプレーヤーはテニスプレーヤーと比べてガット張替えの頻度が高く、ガットに対する感覚はテニスプレーヤーよりも敏感であると考えています。だからこそ、より精度の高いガット張りを求めなければなりません。
お客様との接客に関してもより質を高める必要があると考えています。私自身、バドミントンのプレー経験がないので、ガットについての知識はメーカーが公表している情報やメーカー担当者さんとの会話、お客様からの感想や自分でガットを張った感触に頼っています。
このことはフラットで客観的な意見をお客様に伝えることができることができる反面、地に足がついていなくてリアリティに欠ける説明になってしまうかもしれません。
ですので、これからは自分がバドミントンをプレーして色々なガットを試していきたいと考えています。実際にプレーしてガットを使用した感想は今までの印象とどう違うのか、またはある程度同じなのかを知ることができ、お客様に今までよりも質の高い情報を提供できるようになるのではないかと思います。
また、バドミントンをプレーすることでバドミントンプレーヤーの気持ちを今までよりも深く理解できるだろう(何しろ、自分がバドミントンプレーヤーになるのだから)し、お客様との会話もより弾むのではないかと考えます。
【おわりに】
テニスショップとしてスタートしたラパンブランでしたが、お客様からの問い合わせをきっかけにバドミントンのガット張りにもチャレンジすることになりました。はじめはテニスとの違いに戸惑い、苦戦しましたが、今ではバトミントンプレーヤーの皆様からも一定の評価を得られるようになりました。
この良い流れをさらに加速させるために自らバドミントンをプレーすることにしました。もちろん仕事のためという側面はあるけれども、面白そうだから単純にやってみたいという気持ちもおおいにあります。
私がバドミントンにチャレンジすることによってお客様へのサービスがどう変わるのか、元々プレーしているているテニスやソフトテニスがどう変わるのか、バドミントンをすることで自分の考え方がどう変わるのかが楽しみですし、なにより、新しい世界に飛び込んでいくワクワク感は最高です。
せっかくなので思いっきり楽しんで、そして上達したいと思います。皆さんとバドミントンをプレーできることを心待ちにしております。
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