テニスガット(ストリング)の選び方~構造の違いを知る~

テニスラケットに張られているガットの素材には、主に*ナイロンやポリエステルが使われています。この素材の違いが、ガットの性能に大きな影響を与えるのは間違いありません。
*ナイロンとポリエステルの違いに関しては、こちらの記事をご覧ください。
そして、素材が同じだったとしても、糸の構造(組み方)が違うと、ガットの性能も大きく変わってくるのです。
というわけで、今回はガットの構造の違いを明らかにして、皆さんのフィーリングやプレースタイルにあったガットを見つけるお手伝いができればと思っております。
【糸のできかた】
私達が使っているガットはそのほとんどが合成繊維の糸でできています。では、合成繊維がどのようにしてできているのかを簡単に確認してみましょう。
まず、石油や天然ガスからつくられる原料を縮合重合<しゅくごうじゅうごう>させて原料のチップをつくります。

ポリエステルチップ※日本化学繊維協会より

次に原料のチップを熱で溶融<ようゆう>して液体にし、細い孔がたくさん開いたノズル(口金)から押し出して、冷却した後に巻き取り延伸(長さ方向に引き伸ばす)した後、巻き取られます。

ノズル(口金)※日本化学繊維協会より

紡糸の様子※日本化学繊維協会より

ノズル(口金)には様々な形状の孔<あな>が空けられ、孔の形状により様々な断面形状をもつ繊維をつくることができます。

Y孔※日本化学繊維協会より

糸のでき方※日本化学繊維協会より

このようにして私たちが使っているガットの元となる糸がつくられているのです。
【モノフィラメントとマルチフィラメント】
ここでは、ガットの構造を説明するときによく使われる、モノフィラメントと、マルチフィラメントの違いについて説明いたします。
モノフィラメント(monofilament)とは、撚り合わせていない1本の繊維でつくられた糸のことです。ノズル(口金)から出てきた繊維をそのまま使えばモノフィラメントですね。
マルチフィラメント(multifilament)とは、数本から数十本の単糸(単繊維)を撚り合わせて1本の糸にしたもののことです。
モノフィラメントは触った感じが硬くて耐久性が優れています。マルチフィラメントの方が柔らかいのですが耐久性は劣ります。釣り糸やブラシなどにはモノフィラメントが使われ、衣服やタオルなどにはマルチフィラメントが使われます。
テニスのガットにはモノフィラメントとマルチフィラメントの両方が使われています。
【ナイロンガットにモノフィラメント無し!?】
実は、ナイロンガットには厳密な意味でのモノフィラメント構造のガットがほとんどないのです。
これを聞いて、何言ってんだ!GOSENの「ミクロスーパー」とか色々あるだろ!と思う方は多いでしょう。
では、実際にGOSENのミクロスーパーの構造を見てみましょう。

ミクロスーパーの構造

上の図のように、GOSENのミクロスーパーを始め、ほとんどのナイロン・モノフィラメントガットと呼ばれる製品は、太い芯糸に細い側糸<がわいと>を巻き付けている構造をしています。これは明らかに複数の糸を撚り合わせて一本の糸をつくっているので本来はマルチフィラメントと呼ぶべきです。
ですが、このような構造はテニス業界ではモノフィラメントにカテゴライズされます。テニス業界では芯糸が一本であればモノフィラメントと呼ばれるのです。※ちなみに、芯糸が複数本でも、1本1本がある程度太ければモノフィラメントとされる場合もあります。
このような構造をモノフィラメントと呼ぶのには何か理由があるのでしょうか?
これはあるメーカーの方から聞いた話ですが、「ナイロンガットを完全なモノフィラメントにしてしまうと、ガットを張る際にグロメットを通る時の摩擦や、クランプ(爪)で挟んだ時にできる微小な傷によって、テンションをかけて引っ張った時にガットが破断しやすくなる」とのことです。
ガット張り上げ中に切れてしまうものを製品化するのはリスクが高いです。
この問題を解決するために、芯糸の周りに側糸を巻いておけば、もし側糸に微小な傷がついてしまったとしても、それは芯糸と接着剤でくっついているだけなので破断には至らないというわけなのです。
これを聞いて、「なるほど!」と思いましたね。
ガットの構造の呼び方として、「モノフィラメント」・「マルチフィラメント」が使われるようになったのはいつかはわからないのですが、モノフィラメントがテニス業界で「一本の糸」ではなく、「芯糸が一本の糸」を意味する理由に納得がいきました。※あくまで私の推測です。
ただ、これで話は終わりではありません。実はナイロンガットにも完全なモノフィラメント構造のガットが僕の知る限りでは2つあります。
それはBabolatの「RPMソフト」とDIADEMの「EVOLUTION」です。

RPMソフトの構造

少し本筋から脱線しますが、あれ?RPMソフトはポリガットじゃないの?と思った方もいるかも知れません。
しかし、RPMソフトは「ポリアミド」でできているので、れっきとした「ナイロンガット」です。※ナイロンは元々デュポン社の商標で、今ではポリアミド系樹脂の製品一般に用いられます。
EVOLUTIONの構造の図は入手できなかったのですが、DIADEMの公式HPには「solid mono-filament」と表現されているので、完全なモノフィラメントなのでしょう。あるメーカーの方も厳密な意味でのモノフィラメントだとおっしゃっていました。
RPMソフトは「ポリアミド2重構造」と公式HPで謳っているので、恐らくナイロンコーティングが施されているのではないかと思います。EVOLUTIONはシリコンコーティングが施されています。
これら2つのガットは、コーティングによって張り上げ時の破断が緩和されているものの、克服するまでには至ってはいないとのことですので、「丁寧に張るのはもちろんのこと、マシンでガットを引くスピードを遅くすることが対策になる」と教えて頂きました。
ちなみに、ポリエステルガットの場合はそのほとんどが完全なモノフィラメントです。素材が硬く、微細な傷がつきにくいから完全なモノフィラメントでOKなのだと僕は考えています。
長くなりましたが、次からはいよいよ、ガットを構造ごとに分けて代表的なものを紹介していくことにします。ただ、構造が似通っていてもどのような化学物質が添加されているか、どのような加工をされているかで性能は変わるので、そこはご承知いただきたいと思います。
【ナイロン・モノフィラメント/単芯・側糸タイプ】
ここでは芯糸が一本で、その周りに側糸が巻きつけられているタイプのガットを紹介いたします。
このタイプのガットは弾き感が強く、打感が硬めであることが特徴です。
➀GOSEN ミクロスーパー

ミクロスーパー

《性能データ》
反発力     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★☆☆☆☆ 6
ソフト感    ★★★★★★☆☆☆☆ 6
打球音     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
テンション維持 ★★★★★★☆☆☆☆ 6
切断耐久性   ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
②prince ライトニングXX

ライトニングXX

《性能データ》
反発力     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★★☆☆☆ 7
ソフト感    ★★★★★★☆☆☆☆ 6
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
【ナイロン・モノフィラメント/単芯・二重側糸タイプ】
ここでは、芯糸が一本でその周りに二重に側糸が巻きつけられているタイプのガットを紹介します。
このタイプのガットはそこそこの弾きとやや柔らかめの打球感が特徴です。
➀Babolat シンガットフォース(旧パワジー)

シンガットフォース※画像は加工しています

《性能データ》
反発力     ★★★★★★★☆☆☆ 7
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★☆☆☆☆ 6
ソフト感    ★★★★★★★☆☆☆ 7
打球音     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
テンション維持 ★★★★★★☆☆☆☆ 6
切断耐久性   ★★★★★★☆☆☆☆ 5
【ナイロン・モノフィラメント/複合芯・側糸タイプ】
ここでは芯糸が複合構造になっていて、その周りに側糸が巻かれているタイプのガットを紹介いたします。芯糸が単芯でなく複合構造になっている時点で、モノフィラメントの定義からはさらに離れることになりますが、気にしないことにしましょう。
このタイプのガットは弾き感が強いですが、打球感はやや柔らかめです。
➀GOSEN AKプロ

AKプロ

《性能データ》
反発力     ★★★★★★★☆☆☆ 7
スピン     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
コントロール  ★★★★★★★☆☆☆ 7
ソフト感    ★★★★★★☆☆☆☆ 6
打球音     ★★★★★★★☆☆☆ 7
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★★★★☆☆☆☆ 6
②Toalson アスタリスタ

アスタリスタ※画像は加工しています

《性能データ》
反発力     ★★★★★★★☆☆☆ 7
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★☆☆☆☆ 6
ソフト感    ★★★★★★☆☆☆☆ 6
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★☆☆☆☆ 6
切断耐久性   ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
【ナイロン・マルチフィラメント/細め複数芯・細い側糸】
ここでは、細めの複数本ある芯糸の周りに、細い側糸が巻きつけられているタイプのガットを紹介いたします。
ただ、これらの複数芯はそれぞれモノフィラメントであるとメーカーは説明しています。そりゃ一本一本はモノフィラメントと言えるでしょうけど・・・
このタイプのガットは弾き感と打球感の柔らかさのバランスが良いのが特徴です。切断耐久性はやや低くなります。
➀Tecnifibre XR3

XR3※画像は加工しています

《性能データ》
反発力     ★★★★★★★☆☆☆ 7
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★☆☆☆☆ 6
ソフト感    ★★★★★★★☆☆☆ 7
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
②Toalson バイオロジック ライブワイヤー

ライブワイヤー※画像は加工しています

《性能データ》
反発力     ★★★★★★★★☆☆ 8
スピン     ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
コントロール  ★★★★★★★☆☆☆ 7
ソフト感    ★★★★★★★★☆☆ 8
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
【ナイロン・マルチフィラメント/100本以上の細い糸】
ここでは、100本以上の細い糸で構成されたわかりやすいタイプのマルチフィラメントガットを紹介いたします。
柔らかい打球感が特徴です。切断耐久性は低いです。
①Babolat エクセル

エクセル※画像は加工しています

《性能データ》
反発力     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
スピン     ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
コントロール  ★★★★★★★★☆☆ 8
ソフト感    ★★★★★★★★★☆ 9
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
②Toalson マルチパフォーマンスⅡ

マルチパフォーマンスⅡ※画像は加工しています

【性能データ】
反発力     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
スピン     ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
コントロール  ★★★★★★★★☆☆ 8
ソフト感    ★★★★★★★★★☆ 9
打球音     ★★★★★★☆☆☆☆ 6
テンション維持 ★★★★★★★☆☆☆ 7
切断耐久性   ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
【まとめ】
ナイロンガットには色々な構造のガットがあり、各メーカーさんの創意工夫を感じられて楽しいです。
何かというとすぐポリエステルガットに飛びついてしまう昨今ですが、ナイロンガットを使う方が、ほとんどのテニスプレーヤーのパフォーマンスアップや怪我防止を助けると考えておりますので、もう一度ナイロンガットの奥深さを味わってみてはいかがでしょうか?
【参考・引用サイト】
日本化学繊維協会
Toalson
GOSEN
Tecnifibre
Babolat
prince
          
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